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  読書スタンドに使える本のサイズ

●2種類のサイズ限界注意書き

読書スタンド(ベッドタイプ/兼用タイプとも)に装着できる本のサイズに関して、メーカーではいままで「文庫本サイズから週刊誌(B5)サイズまで、厚さは4cmくらいまで、重量は1kgほどまで」と称していました。現在でもカタログや販売資料にはそのような記載になっています。それに従って私どものサイトでもその通りの記述にしておりました。

しかし、製品に同梱されている取扱説明書には、サイズは同じですが、「厚さは3cm、重さは700gまで」と記載されています。あれっ、どっちがホンマやねん、ということですね。実は、お買い上げいただいたお客様から指摘を受けるまで、わたしどもではこの「異同」を恥ずかしながら全く把握しておりませんでした。

このふたつの数字、どちらが正しいのか。メーカーに問い合わせてみました。メーカーによると発売以来ずっと1kg-4cmのセンでやってきて、それでなんの問題もなかったのだけれど、昨年、とある販売会社から「余裕をたっぷり見た表現にしてほしい」との要請があり、取説を作ったそうです。それだったらそれで、あらかじめ伝えておいて頂戴よ。

ともあれ、今後は私どもでは「正式」には「厚さ3cm、重さ700g」ということにします。ただ、ホントのところをいえば、1kg-4cmでもまったく問題ないと考えとります。

しかし、1kg、4cmっていう本は実のところ、あまりないんですね。かなり分厚く、かなり重いですよ。私は分厚い本が好きです。分厚い=長い本というのはたっぷり楽しめるじゃないですか。それに、分厚い=ページ数が多い本というのは、概してページあたりの単価が安くなっている傾向があります。つまりお買い得。平均からいって、かなりの分厚本マニアな私ですが、それでも1kg-4cm超えの本は本箱を見渡してみても、そうはありません。辞書全集のたぐいをのぞけば、1パーセント未満というところでしょう。

何冊か抜いてきました。


 

 
 

●虚数の情緒

まず吉田武著『虚数の情緒−中学生からの全方位独学法』(東海大学出版会)。これは名著です。数学の本なんですが、これならわかるし、わくわくもする。数学だけでなく「ほおー、十二平均率つーのはこういうシクミであったのか」なんちゅうことまで書いてある。最後のほうはちょい難しくなっちゃいますが、なにしろ量子力学の範囲ですから、ま、しゃあない。

先日、この本を友人Sに勧めました。とても面白い。ここ数年で読んだ本のなかでもオールジャンルでトップだと言ってくれました。彼は剛の者で、この分厚い本を通勤の際に読んでいるとのこと。すごいなあ。体力あるなあ。ただ、おもむろに鞄のなかからデカい本を取り出し、熱心に読みふけりながら時々ニヤっとしたり軽く吹き出したりしているので、きっと「世の中にはあんな分厚いエロ本があるんだ」という間違った感想をまわりに流布していることであろう、と申しておりました。

この本、ページ数は1000ページ。厚さは5.5cmありますし、重さもほぼ1.4kg。これは旧規格からいっても、読書スタンドの限界を超えてます。


 

書影・虚数の情緒

 
 

●サル学の現在

つづいて立花隆『サル学の現在』(平凡社)。これは文春文庫にもなってますが、オリジナルのハードカバー版の方。これも名著です。つーか、なんも私が言わないまでも、名著であるという世間の評価が確立しております。「現在」といってももう15年ほど前の本になりますが、今でも魅力はまったく減じてません。ひとくちにサル(霊長類)といっても、実に多様。そして豊穣。2段組み714ページというボリュームですが、最初から最後までつつーと読んでしまう。ついつい夜更かししてしまう。それが危険です。

お猿関係の本では、この本もいいんですけど(イウマデモナイ)、河合雅雄『人間の由来』(小学館)がもっとお勧め。家族とか性とかといったヒトとしての根源的なギモンを霊長類の深い観察の中で考察していくという本。興奮します。ただ、惜しむらくは、これ、上下二冊本なんですよね。『サル学の現在』のほうは3,262円ですが、ほぼ同時期に刊行されたこっちは、2冊本なんで4,893円×2。ほぼ1万円ですからね。本の価格というのは、なにもボリュームだけで決まるものではないんですけど、コストが高く付く(刷部数が少ないとか)場合には、このように分冊にすることも多いんじゃないかな。分厚本がお買い得ってのはこういうところにもあります。「現在」の方はページあたり4円ほどですが「由来」は5円80銭ほどする。いい本なんだけどなあ。やっぱ、ちょっと高いなあ。で、この本はその後河合雅雄著作集に収録されたんです。こっちも2分冊で、価格も5,090円×2とちょっと上がっている。しかし、こちらは[増補版]と銘打ってあって、あれれ、増補されているのか、どうなってるんだろ、読みたいなあ、などと思わせてしまう。悩みます。

ともあれ『サル学の現在』は4.8cmで1.06kg。これも旧規格オーバー。サイズもA5よりすこし高さが高くなっています。


 

書影・サル学の現在

 
 

●性という「饗宴」

新しめの本では伏見憲明『性という「饗宴」』(ポット出版)もデカいです。4.3cmある。その割りに重量は軽く920g。旧規格でいうなら、厚みはオーバー、重さは範囲内ということになります。厚い上にカバーがショッキングピンクなので、本棚の中で目立つこと目立つこと。

これもまたむちゃくちゃ面白い。性を全面に押し出した本でここまでの知的な興奮を感じた経験は松沢呉一『魔羅の肖像』以来と言ってもいいでしょう。対談集というのはえてして「寸どめ感」が生じるものなんですけど、この本は十分満腹感を感じるようにできている。相手によってそのレベルに多少の差があるが、それは初出がいろいろ(つまりそれぞれ編集者が異なる)ということなんでしょうが、それを乗り越えて全編一定以上のレベルになっているのは、伏見さんの「聴き手としてのすごさ」ということなんでしょう。3400円+税という価格は激安です。


 

書影・性という饗宴

 
 

●マレー諸島 新装版

A.R.ウォレス著宮田彬『マレー諸島 新装版』(新思索社)。これも分厚い。思索社の本というのは、なぜか古本屋でよく見かけます。これも近所の古本屋で見つけたものです。とても美しい本で、カバーの挿画と著者名に惹かれて買ってしまったんですが、一読して、「あーおれもそろそろ老境に入り始めたんだなあ」と思いました。

ウォレスは例の「ダーウィンに消された男」ですよ。内容はマレー諸島の博物学的報告です。つまり、さして関心のない場所の、かなり古い時代からの報告というわけです。しかもうんざりするほど長い(2段組730ページ)。これを寝床で毎夜、少しずつ読み続けるわけです。ちびちびと上等のウイスキーを楽しむように。こういう楽しみは、そりゃ、老人のものですよ。ようやく自分もこのような時間の過ごし方を愉しめるようになったんだなあ、という印象。悪いものではないです。これに味をしめて、ベイツ(ベイツ型擬態のベイツ)の『アマゾン河の博物学者』(これも新思索社でこれまた分厚い)はじめ、博物学の黄金時代のレポートをぽちぽち読み続けています。私としては大鉱脈を掘り当てた気持ち。

このジャンルでもっとも有名なものはダーウィン『ビーグル号航海記』でしょう。これははたちくらいの時に読んでいる。ま、それなりに面白かったのですが、今感じる面白さ、愉しさはまったく感じませんでした。年とってよかったなあと思うのです。こういうのは文庫(『マレー諸島』は別の訳者で文庫化されている)で読んじゃいけませんぜ。文庫だと、時間の流れ方が変わってくるように思います。

ともあれ、これは4.2cmで1.2kg。旧規格ちょいオーバーってところです。


 

書影・マレー諸島

 
 

●これらの本を試してみると……

これらの本をとっかえひっかえ読書スタンド(兼用タイプ)にとりつけて、ハンドリングを確かめてみたんですが、ほとんどダイジョウブ。『虚数の情緒』はかなり困難でしたが、それでも「技術でなんとかなる」レベルで、他のは、ほぼ問題なく読めました。ページ押さえの金具が、本が分厚いため、時折バチっと激しくはじけて外れることがあるものの(これは音にビビります)、慣れてくるとそういう事故もなくなる。

難点は最初のセットの際くらいで、あとは、いささかこわごわながらもなんとかなる。「これ以上のサイズの本をセットするな」という取説は、電子レンジの「金属を入れるな」とか、コンセントにドライバーを突っ込むなといった禁止事項とはレベルというか趣旨がことなります。この禁忌から逸脱することで生じるトラブルが、たとえば死とかにつながるということはないんじゃないかな。仮に本が顔の上に落下したりしたら、かなりイタいでしょうが、死ぬことはない。よしんば、万が一命を落とすようなことになったとしても、この死に方は読書人としては、かなりいい線いっているんではないかと思います。

つまり、販売会社としての弊社としては、あくまで「厚さは3cm、重さは700gまで」と言い募りますが、利用者としての私は、ダイジョブダイジョブ。セットさえできればこっちのもんだ、という姿勢で臨んでいきたいと考えておる次第です。


 

 

 
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