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開発者インタビュー
Book-X・柏木徹志氏
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開発者インタビュー

ブックスペーサBook-X
有限会社アクロス代表取締役 柏木徹志氏

●開発までの経緯

【Yomupara】この製品ーブックスペーサBook-Xは今までにまったくなかったコンセプトの商品だと思うのですが、この商品を開発された経緯を教えてください。

【柏木徹志】私も昔から本好きで、子どもの頃から読書を楽しんできたのですが、本棚から本を抜き出すと、本が斜めに倒れたり、乱れたりすることがずいぶん前からイヤだったんです。いささか気分が悪いなあとずっと思ってきました。でも楽しみのための読書の場合、抜き出すのは1冊だから、まだしも気になりません。

【Y】そうですね。ぼくは今までまったく気になりませんでした。性格的なことかもしれませんが……

【柏木】私は橋やトンネルなどの土木工事の管理の仕事をずっと行ってきました。新しい仕事を請けると、橋なら橋、トンネルならトンネル関連の本をドバっと本棚から抜いてこなければなりません。1冊ならまだしも、複数冊を一気に抜き出すと、本の並びが崩れてしまうでしょ。

【Y】なるほど。確かにそれはそうかもしれません。

【柏木】長い間、それが気になっていたんですが、ある日、思い立ってその解決のためのものを設計してみたんです。仕事柄CADの取り扱いは慣れていますから、CADでもって、本を抜き出した際にできるスペースを埋めるような構造はどうあるべきなんだろうか、と。基本的な構造は、すぐにできました。

【Y】と、言いますと?

【柏木】建築の専門用語に「トラス構造」というのがあります。自由に回転する支点で構成された三角形を組み合わせて強度を出すという構造です。

【Y】ああ、鉄橋なんかでよく見かける構造ですね。

【柏木】四角形は4辺の長さが同じでも、同じ四角形になるわけではありませんね。4本の棒を組み合わせて長方形の枠を作っても、それを斜め上から押さえつけると、ぐしゃっとつぶれて平行四辺形になる。しかし、三角形は違います。三角形は3辺の長さが決まれば、でき上がる三角形の形は1種類しかないのです。

【Y】なるほど。だから耐震工事で筋交いを入れたりするのですね。

【柏木】注目すべきは、その時、三角形の頂点をガチガチに固定する必要がない、ということなんです。取りあえず止まっているだけで、かなりの強度が実現できる。CADに向かう前から、このトラス構造を使えば実現できるという道筋はわかっていました。倒れてこようとする本と、それを支えようとする物体の両者でなんらかの三角形が作れれば、何も倒れてくる本と物体を接合したりなんかしなくても、しっかりと支えることができるはずです。

【Y】なるほど。



 

Book-X
ブックスペーサBook-Xのページへ


Book-X
開発者 柏木徹志氏
(有)アクロス代表取締役

 
 

【柏木】ブックスペーサBook-Xを見ていただくと分かるのですが、倒れ掛かってきた本とブックスペーサが三角形を形成します(図の赤線の部分)。

【Y】ほんとだ。それに、ここ(図の黄線の部分)にも三角形ができていますね。

【柏木】その通りです。これらの三角形ができるため、力学的にとても安定する。

【Y】つまり、本をしっかり支えてくれるというわけですね。

【柏木】よく、このBook-Xの真ん中の交点がしっかりしているため、支えることができるんじゃないかと誤解する人がいますが、触ってごらんになればわかるように、それはまったく関係がありません。

【Y】とてもスムーズに動きますよね。でも、なんだか油圧式のダンバーのような感触ですね。

【柏木】それは交点部分にゴムのバネがしこんであるからです。でもそれは構造にはほとんど関係がありません。

【Y】そうかもしれませんが、使用感を高める効果はありそうですね。
【柏木】トラス構造で支えているってことは、Book-Xを横向きに置いて、上に本を乗せてみればわかります。テーブル面の摩擦がありさえすれば、上に本を乗せても、でき上がる三角形のおかげて、X型がツブれず、本を支えてくれます。

【Y】なるほど、ホントだ。


 

トラス構造
三角形のトラス構造が本を支える

バーコードリーダ
横向きにして本を上に乗せてみる
 
 

●試行錯誤

【柏木】ここまではすぐできました。でも、ここからが時間がかかりました。基本構造はこれでもいいのですが、X型の角度をより小さな力で変更できるようにするには、どのような形がいいかとかを試行錯誤しながら試作を繰り返しました、これにはずいぶん時間がかかりました。

【Y】交点のあたりの樹脂の形状はそうした試行錯誤の結果なのですね。

【柏木】X型を広げるときは上下に指をかけて押さえる、X型を狭めるときは左右に指をかけて押さえる、と、元がどのような角度であったとしても片手でスムーズに動かせるように工夫したカーブになっているはずです。

【Y】なんで片手?

【柏木】だって、もう一方の手は抜き出した本を抱えているわけでしょ。

【Y】なるほど。使用の際のシチュエーションを考えるとそうなるわけだ。

【柏木】このカーブをほんのちょっと変えるだけで、使用感はずいぶん違うんです。

【Y】そういう試行錯誤を繰り返して、ようやく完成した、と。

【柏木】いやいや、まだまだ完成には至りませんでしたが、特許も出願できましたので、営業活動をはじめたわけです。




 

設計図の一部
Book-X設計のCADデータの一部
(クリックすると拡大できます)
 
 

●そして専業化へ

【Y】えっ? 営業活動……? 誰に対して?

【柏木】つまり、こういう素晴らしいものができた、と(笑)。については御社で製造販売していただけないか、と。いろんな文具メーカとかに。

【Y】で、どうでした? うまく行きましたか?

【柏木】はかばかしい反応はまるっきりありませんでした。

【Y】こんなに素晴らしい製品なのに、と(笑)。

【柏木】ホントですよ。ま、今から思うと、その頃持ち歩いていた試作品はずいぶん完成度の低いものではあったのですが。でも、なんでわかってもらえないのかなあ、という不満はありました。で、土木の仕事を整理して、この会社(有限会社アクロス)を立ち上げたんです。

【Y】え? アクロスはBook-Xのための会社なんですか? それまでの仕事はヤメちゃった?

【柏木】けっしてそれまでの仕事が不調だったわけではないんですよ。けっこう忙しかった。でも、こうした仕事は始まるとずいぶん時間をとられちゃうでしょ。その間はBook-Xのことができなくなる。それならいっそ、この製品のためにすべての時間を注ぎ込みたい。

【Y】勇気あるなあ……。もちろんご家族もあるんでしょ。

【柏木】下の子どもはまだ2歳ですからねえ。でも、自分としてはけっこう自信があるんですよ。

【Y】がんばってください。で、これからどのような展開をお考えですか?

【柏木】今一番アタマを悩ませているのは世界的な金属素材の急激な値上がりです。Book-Xはステンレスでできているのですが、このステンレスが金属の中でももっとも激しく値上がりをしています。このままでは価格を維持できないので、ステンレス部分をメッキした鉄かなにかに変えることも検討しています。どうでしょうかね。

【Y】いいんじゃないですかね。この商品を買う人が購入の理由として「ステンレスだから買う」っていうことは、ちょっと考えにくいし、機能や使い勝手が変わらないなら素材はなんでもいいと思いますよ。

【柏木】そうですか。少し安心しました。で、今後はできれば世界に進出したいですね。世代的なヘンケンかもしれませんが、ドイツの人なんかはBook-Xのよさがわかっていただけるんじゃないかと想像しているんですよ。




 



 
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