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本にフィルムをかける
ブッカーというもの
図書館の本は透明の粘着カバーで覆われています。このカバーのことを、図書館業界では「ブッカー」と言います。ブッカーをかけることで、たくさんの人の手にとられる図書館の本を、汚れや破損から守ろうという狙いです。

かつては、どこの図書館でもブッカー名人といわれる人がいたそうです。ブッカーをかけるというのは、いわば一発勝負であり、失敗すると(ゆがんだり、しわになったり、気泡がはいったり)は取り返しがつきません。誰しも緊張を強いられる作業です。

こういう作業は、ある程度は「場数」です。幾度となく冷や汗を流し、幾度となく失敗を繰り返すことで、徐々に習熟し、めったなことでは失敗しない確固たる技能を身につけていくものです。しかし、その反面、ある程度は「天才」です。「生まれつき」です。場数を踏んでも下手な人はどうしようもなく下手であり、天才は、たった数回の経験しか経ていなくてもピシッバシッと仕上げることができます。

そんなこんなで、どこの図書館でも、ブッカー名人っていう人がいたそうなんです。

しかし、これも昔の話になりつつあるんですって。

というのも、いまはラベルを貼り、ブッカーをつけた状態で流通業者が図書館に納入するのが普通になりつつあるそうなのです。つまり、図書館員はブッカーを掛けなくてもよくなった、と。

なんだか寂しいですね。図書館員でない私でも寂しさを感じるんですから、かつてブッカー名人なんて呼ばれていた古手の図書館員は、もっと寂しいでしょうね。深夜、おれの人生って、いったいなんだったんだろうかな、なんて思ってらっしゃらないといいですけどね。

ところで、自分の蔵書にブッカーをかけたくなることって、ありませんか? 私はあります。以前からありました。

本にブッカーを掛けるということは、言うまでもなく、本に関する破壊活動です。たとえば、古本屋に売る場合は、あきらかに値段が下がります。図書館は、ばんやむをえずやっているのです。別にそこまで追い込まれているわけでもない自分の蔵書にブッカーを掛けたいなんて、オーソドックスな愛書家からみれば、お前、正気か、ってことでしょう。

こんな希望をもつのは私一人かと思っていたんですが、そうでもないってことに数年前に気がつきました。中にはいるんですね。自分の本にブッカーをかけたいなどと思っている人。

よかった。ひとりじゃないんだ。

私にしたところで、何もすべての本にあの透明のカバーを貼り付けたいと思っているわけじゃないですよ。ブッカーを掛けたい本には3つの条件があります。

ひとつはソフトカバー/並製本であることです。ここでいう並製本とは、表紙と中身の大きさが同じで、表紙が柔らかい紙でできていることです。文庫や新書、選書のたぐいですね。コンピュータ関連書籍の多くもそうだ。上製本、つまりハードカバーはブッカーをかけるのをためらうだけでなく、技術的に難しいんですよ。ブッカーをかけても耐久性とかがドラスティックにかわるわけじゃないですし。

ふたつめの条件は、好きな本である、ということです。これは次の条件ともある程度かさなっているんですが、中身が好きじゃなければブッカーをかけるなんて手間はとりません。

そして最後の条件がよく使う本であるということ。好きであっても、小説のような本は「よく使う」わけじゃありませんから、ブッカー欲がわいてこない。なにも辞書とまではいいませんが、資料として頻繁に使うタイプの本ですね。

この3つの条件の中で、もっとも(心理的に)重要なのはふたつめじゃなかろうか、と思うのです。

その本に対する愛が、なんか、アクションを起こさなければならないと思わせちゃうんじゃないかな。ブッカーをかけるというアクションを起こすことで、その本に対する愛情の深さを表明しておる、と。どっか倒錯しておりますが。

手をかけた、ということで、愛を表明してるんじゃないか、と思うんですね。


実用面からみたブッカー
特に文庫や新書の「辞書」のたぐい。これにブッカーをかけると、効果は絶大です。最初にそれに気がついたのは、洋書のペーパーバックでした。

アメリカっていうのは、さすがに資本主義の総本山って国で、「たくさん売れれば安くなる」という原理が貫徹している。たとえば音楽CDでも、ヒットチャート上位のものは安く、「ザンベジ、クスクル族の宗教音楽」なんてのは、ものすごく高い。日本ではそういうのは1500円シリーズとかになっちゃうのですが。

本でもそうでありまして、概してアメリカでは本が高いのですが、よく売れる本は例外で、ペーパーバック版の英英辞典(っていってもあっちでは「国語辞典」なんでしょうが)は、むちゃくちゃ安い。5ドルくらいからある。あまり使わないとわかっちゃいても、ついつい買っちゃいます。

しかし、あっちのペーパーバックは使っていると、すぐに表紙がまくれたり、ページがとれたりと、ずいぶん悲惨なことになっちゃう。だから買ってきてすぐにブッカーをかけるといいのです。こうしておくと、哀しいことになりはてない。いつまでも気持ちよく使い続けることができます。

いったんブッカーを自分でかけてみると、その効果はすぐに体感できました。なにより安心感が違う。表紙は汚れないし、しっかりがっしりする。手触りもなかなかいい。

小説やエッセーではそうでもないんでしょうけど、文庫や新書にあっても、自分にとってはリファレンス、つまり、座右において頻繁に参照するという用途に用いるものもあります。文庫や新書はそもそもそういう使い方読まれ方を前提にした作りになっていませんから、すぐに汚れたりヘロヘロになったりしてしまいます。ブッカーを掛けることでそういう心配から解放されます。

個人ユースにあっても、ブッカーは意味のないことじゃない、と思うのです。


ブッカー装着の技量
ブッカーは基本的に貼り直しがききません(当店取り扱いのフィルムルックスソフトPPは貼り直しできます)。立体的にカバーしていくわけだから、正直、ある程度の技量は必要です。特に、上製本は難しい。しかし、文庫や新書といった並製本への取り付けはすぐに上達することができます。何冊かの経験を積むと、ほとんどの人がパリっと仕上げることができるようになるはずです。

風呂敷でものがちゃんと包める技能、荷崩れしないようにロープを掛ける技能、サカナを三枚におろす技能などは、人としていつかちゃんとできるようになっておきたいと思いませんか。そのための修練を一生のうちのある時期に積んでおくというのは奥ゆかしいことだと思いませんか。私はそうした技能のひとつに「ブッカーをちゃんと掛けられる技能」も付け加えたいと思うのです。


数あるメーカーのなかでフィルムルックスを選んだわけ
さきほどからブッカーブッカーと連呼してきましたが、実は「ブッカー」というのは登録商標なんですね。その名も「株式会社 日本ブッカー」という会社が販売しています。私は普通名詞として使ってきましたが、もしかしたら怒られるかもしれない。ですんで、今後は「ブックフィルム」という呼び方をしましょう。

ブックフィルムは日本ブッカーだけでなく、いくつもの会社から発売されています。ブックフィルムを扱いたいとは思っていたのですが、さて、ではどのメーカーのものにするか。時間をかけて比較検討してきました。

そして、やっぱりどう考えてもここだろう、と自信をもって決めたのがフィルムルックス株式会社の製品でした。こういう言い方は生意気ですね。扱わしていただく立場なのに。でも、こういう傲慢な態度を取らなきゃならないのが小売業の役割なのでしょう。ある意味、ユーザを代表して商品をまず選択するのが小売業の使命であるわけですから。

フィルムルックスのブックフィルムに決めた最大の要因は「手触り」です。中にはさもプラスティックといった感じのテカテカツルツルしたブックフィルムもありますが、フィルムルックスのはどこかしっとりしています。透明感も高く、しっかり腰があるところもいい。

もしかすると、私が日々杉並区立図書館を利用することが多いのでここの製品の感触に好感をもったのかもしれません。聞けば、杉並区立図書館の本はフィルムルックスの製品でカバーされているのだそうです。杉並に限らず、多くの公立図書館、大学図書館で同社の製品は使われています。

フィルムルックスの製品はドイツ製なのです。図書館の本がブックフィルムに覆われているのは、すでに当たり前ですが、これはそもそも同社が30年前にドイツのメーカーとの合弁により設立され、日本で販売を始めたことから始まったものだそうです。つまり老舗。それもまたポイントです。

だいいち、フィルムルックスは専業メーカーです。弊社でも取り扱いますが、ブックフィルム以外の製品もないこともないんですが、非常に少ない。ブックフィルムとその周辺に特化した専業の会社なのです。私は専業メーカーに弱いんですね。ぐぐっと来てしまうんですね。しかも主力製品の「フィルムルックス 609」は30年間、同一ブランドでずっとやってきたというのですね。こういうのにも弱いんです。ドイツです。

0年間同じ製品だということは、逆から考えれば、今後30年の経年変化にも安心できるということでもあります。大切な本をカバーしたら、時間とともに糊やフィルムが変色したり、しみ出してきたりしたら何にもなりません。伝統ある製品は、そういうところが安心です。私はこういう分野ではガチガチの保守反動主義者なのです。


あわせて補修用製品も
フィルムルックス社と取り引きをすることになって、初めて知ったことがあります。それは同社が本の補修・保守用製品をいくつかラインナップに加えていたことです。これは知りませんでした。

本は紙で出来ていますから、大事に使っているつもりでも、破れたりすることがあります。ノドの部分が破れて壊れてしまった本も珍しくありませんし、無線綴じの本はページが取れることもよくあります。

大事な本はいつまでもちゃんとした状態に保っておきたいものです。

フィルムルックス社の本の補修用品の中から弊社で取り扱うことにしたのは4点です。

まずは「ペーパーエイド」。これはページの破れを補修する無酸性のテープです。破れ目をセロハンテープで補修すると、数年もたつと弾力性がなくなり、黄色っぽくなり、糊がまわりにしみ出てきます。直したんだか逆に壊したんだかわかったものではありません。変色の少ないといわれているメンディングテープにしても、安心はできません。そもそもそれらのテープは、そんなに長期間の使用を前提に作られている製品ではないから、それはやむをえないことでしょう。だから書籍の補修専用のテープの意味があるのです。経年変化がなく、黄変せず、半永久的に弾力性を保つということです。貼ってみると、修復箇所がほとんど目立ちませんでした。コピーをとってもテープの影はうつりません。ついつい破れた本はないか、と本箱を漁ってしまいました。

づいて「補修クリアテープ」これはアメリカのKapco社の製品です。この会社も本のメンテナンスのための製品を多数作っているようです。私はこの会社のWebページでこの手の商品の分野のことを「book care products」と呼ぶことを初めて知りました。なるほどね。もちろんアメリカではこんな日本語の製品名であるわけではありません。どうやら「Easy Bind Repair Tape」と呼んでいるようです。何だかアメリカだなあ。

これは書籍のノドを補修・補強することを主たる守備範囲にするテープです。道路には白いセンターラインが引かれていますね。「補修クリアテープ」にはテープの中央にセンターラインのようなスリットが入っています。まず、書籍の高さにテープを切ってから、このセンターライン部の裏紙をはがします。センターラインの部分だけが糊がむき出しになるわけです。

テープを山折りにして、中に直定規をはさみます。この状態で本のノドの部分にセンターラインの糊をおしつけます。その後、片側の裏紙をはがし、定規を押さえつけるようにすべらせます。返す刀で、もう片側も同じ動作。まさにイージーバインドです。アメリカです。このたやすさ感はまさに感動もの。

テープの透明度はそう高くはありませんが、下に文字や柄があっても十分見えます。透明度のかわりにテープの強度はたいへん強く、両手でおもいっきり引っ張ってもちぎれたりしませんでした。ノドは本の中で、もっとも激しく動かなければならない部分ですから、この強度は重要です。糊は無酸性で、黄変せず、バツグンの耐久性があるそうです。

テープとしてはいささか高価(30m巻き1995円)ですが、値段だけのことはあります。本好きの方なら1本常備されるといいと思います。

全集の月報などのたぐいのように、本には綴じ込んでいない何かがついていることがあります。これをはさんだままにしておくと、ついつい散逸してしまいがちです。そういったものを表3(裏表紙の裏)に貼り付けておくのにも、このテープは重宝しそうです。

フィルムルックスの営業マンに聞いた話ですが、あるキリスト教関係の書店でのお客様は、聖書を贈り物にするさいに、あらかじめこのテープでノドを補強してから贈られるとのことです。

なお、Kapco社のWebページには「補修クリアテープ」の使い方のガイダンス動画(RealPlayer形式)があります。なんだかボケボケで細部まではよくわかりませんが、作業の流れを体得するのには高価があるでしょう(動画への直接リンク)。

3つめのbook care productは糊です。ノドの破れが進行すると、表紙そのものが束から離れてしまうことがあります。これは悲惨です。この表紙と本体をくっつけるための専用糊が「ブックグルー」です。これもまた専用品の強み。無酸性で本を痛めず、弾力があるので、本の開閉を阻害しません。しかし、これはどちらかといえば、ヘビーユーザー向けですね。

最後のアイテムは超ヘビーユーザー向け。なんと言っても革装の本にしか使わないものだからです。我が国では革装の本はそうあるものではありません。案の定、これはフランス製だそうです。フランスの国立図書館からの開発依頼によりつくられた革製本のクリーニング剤「CIRE213」。革製本に養分を与えると同時に保湿性を回復させ、本来のしなやかさを取り戻します。

これについては私もそう売れるものじゃないとは思っていますが、でも、必要な人はきっといらっしゃるはずと思って取り扱うことにしました。

3つめのbook care productは糊です。ノドの破れが進行すると、表紙そのものが束から離れてしまうことがあります。これは悲惨です。この表紙と本体をくっつけるための専用糊が「ブックグルー」です。これもまた専用品の強み。無酸性で本を痛めず、弾力があるので、本の開閉を阻害しません。しかし、これはどちらかといえば、ヘビーユーザー向けですね。

好きな本はいつまでも大切にしておきたいものです。


ライトウェッジ
Yomuparaラインナップのベッド読書用品の2番手は「ライトウェッジ」です。

これはその先進性にこそ注目していただきたいアイテムです。厚手の透明アクリル板に取っ手がついたような形状の製品ですが、このアクリル板そのものが光ります。このアクリル板をページの上に直接置いて使います。

いままでのライトは離れた光源から、被写物に光をあて、その反射を目にいれるという構造でした。これは、言ってみればページそのものを光らせるという新方式です。

実用上でのこの製品の最大のメリットは、周りに光を漏らしにくいということです。つまり、寝室を共にする人がいる場合に相手に迷惑をかけにくいということです。

明かりがページ面に密着しているため、光度がそう必要ないということから、周り漏れることが少ないのです。

使っていると、そのユニークな発想に心底感動します。そこんとこが、この商品のウリでしょう。

ただ、実用面から言うと、若干問題がないわけではありません。ページをめくるたびに、ライトウェッジを持ち替えないとなりません。これがちょっと困りごと。しかし、それが唯一の欠点でしょう。

私自身は使う機会が少ないんですが、よく出張に出かける方などには必需品ではないでしょうか。ホテルや飛行機の機内での読書には、他にない快適さをもたらしてくれるでしょう。


マイティブライト
マイティブライトの守備範囲はライトウェッジと重なり合います。クリップでもって表紙にはさみこみますので、ベッドで本を読む際に、どのような姿勢をとっても、いつでも明かりが付いてきてくれます。見た目より、ずいぶん軽いので、表紙にくっつけといても苦になりません。

この商品の欠点は電池駆動ということです。30時間ほどもちますので、かなりヘビィな使用でも数週間は持つでしょうが、電池であるということは少々気がかりです。なんといっても、AC電源に比べると電池はランニングコストがかかります。

実これが少し気になります。

私はこれを常備用の懐中電灯として使っています。我が家は寝室が二階にあり、いままでは寝室にいくのにわざわざ階段や廊下の電灯を点け消ししていました。今は、マイティブライトを点灯して階段を上がっていきます。


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